介護施設が災害時に備えて備蓄しておきたい非常食の種類と重要性
地震や台風などの災害時には、停電や断水といったリスクが伴います。
一般家庭と同じように、介護施設でも備蓄品を揃えておく必要があります。
備蓄品といってまず思いつくものは缶詰のような保存がきく食品ですが、介護を受けている方のなかには咀嚼機能や嚥下機能が衰えている方も少なくないため、そうした機能低下を補えるような食品を用意しなければなりません。
この記事では、介護施設の備蓄食品・非常食について、種類や重要性、選び方のポイントを紹介しています。
介護施設でどのような食事を準備するべきなのか、ぜひ参考にしてください。
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目次
介護施設の備蓄食品と非常食のリスト
介護施設の備蓄品としては、飲み物に「水」食品に「米」「フリーズドライ」「缶詰」が挙げられます。
それぞれなぜ必要なのか、必要な量も含めてみていきましょう。
備蓄品①水
水は、介護の程度や健康状態に関わらず生きるために欠かせない飲み物です。
直接飲用するだけではなく、うがい・手洗い・傷口の洗浄・食品を軟らかく煮るといったさまざまな目的にも利用できます。
咀嚼機能が衰えた方には水でふやかした食品を提供したり、おかゆや重湯として提供したりすることもできます。
暑い時期の災害では脱水症状も懸念されますが、水があれば適宜水分補給が可能です。
災害用の備蓄には、1人あたり1日3リットルの水が必要といわれています。
最低でも3日以上は水を備蓄しておく必要があるため、1人あたり9リットルの備蓄を行いましょう。
水はそのまま水道からタンクに入れると、保存期間が長くなるほど状態が悪くなってしまいます。
そこで、あらかじめ賞味期限の長い水を購入し、密閉性の高い容器に入れたままの状態で、湿度が少なく寒暖差のない環境に保存します。
備蓄品②米
米は、そのままでは口にできないため乾燥した状態で備蓄をする場合は、炊飯器やコンロなどの設備が必要です。
しかし、災害時には調理自体ができないか、安全上の問題で火を扱えない可能性があります。
そこで、炊かずに食べられる「アルファ米」やパックご飯の備蓄を検討しましょう。
アルファ米は、パッケージに水またはお湯を注ぐことでご飯に戻すことができるお米です。
パックご飯は水やお湯で戻す必要がなく、常温でも数年間保存できるものがあり、開けてすぐに食べられる点ですぐれています。
1食分のアルファ米またはパックご飯は、最低でも3日分は備蓄しておきましょう。1日3食を食べると考え、合計9食が必要です。
備蓄品③フリーズドライ
フリーズドライとは、食品を凍らせて水分を昇華させ、真空に近い状態で乾燥させる方法です。
菌の繁殖を防いで食品の味も失わず、水やお湯を注ぐと元の状態に戻ります。
アルファ米のように水分があれば元の状態に戻せるため、手軽かつ好きなメニューが選べる便利な食品です。
一から調理する必要がなく、味付けも済んでいるため、栄養価を考えていろいろなメニューを揃えておくと便利です。
フリーズドライにはビスケットやクッキーのような菓子から納豆、味噌汁、リゾットなど調理済みの食品が揃っています。
老人ホームでは、入所者一人ひとりの健康状態や必要なカロリー量にあわせて、1日に必要なフリーズドライ食品を組み合わせると良いでしょう。
備蓄品④缶詰
缶詰は備蓄品の定番ですが、大量の備蓄品を保存する老人ホームでは、長期保存に適したものがおすすめです。
保存期間をチェックしたうえで、最低でも3〜5年以上常温下で置いておけるものがおすすめです。1
食分を1缶とすると、3日分で約9缶程度用意しておきましょう。
缶詰は密閉性が高く、空気に触れて酸化する心配が少ないため、スープから固形物までさまざまな食品が選べます。
フリーズドライにないメニューを揃えて、食品のラインナップを多くしておくと、備蓄食でも飽きずに食事が楽しめるでしょう。
缶詰の注意点として、缶切りが必要なものや開封に力が必要なものは避けたいところです。
災害発生時、介護スタッフや職員が必ずしもその場に居合わせられるとは限らないため、入所者ご自身でも手軽に飲食ができるものを用意しておきたいところです。
備蓄品⑤その他
災害時は現場が混乱し、ホームまで支援物資が届きにくくなることがあり、必要な食事が思うように配食されない可能性があります。
非常食や備蓄用食品については、入所者それぞれの健康状態に対応したものを用意するようにしてください。
介護施設に入所している方は、既往症や体の機能低下を抱えている方が多くみられます。
たとえば、腎臓の機能が低下している方には塩分を控えた食事が必要です。
通常の食事では塩分の摂りすぎになってしまうため、減塩食として調理されたフリーズドライや缶詰を準備しておきましょう。
介護施設における備蓄食品と非常食の重要性
災害時は食料品をはじめ、あらゆる物が手に入りにくくなります。
介護施設に備蓄食品や非常食が備えられていないと、どのような問題が起きるのでしょうか。
災害時の問題①ライフラインが止まり調理できない
災害時は停電や断水によって、ガス機器や給湯器が使用できなくなる可能性があります。
ライフラインが寸断されると電気・ガス・飲料水の確保が難しくなるため、「ガスが使えても水が出ない」「水は出るが停電しており調理器具が使えない」といった問題が起こります。
ライフラインの停止や調理機器が手元にないといった状況下では、調理済みの缶詰やフリーズドライ食品が役に立ちます。
水がなくても食べられるもの、水さえあれば食べられるものの2種類を用意しておくと安心です。
【関連記事】高齢者が十分な水分補給をとるための工夫とコツ
災害時の問題②栄養不足による健康被害を引き起こす
備蓄食品や非常食がなければ、施設に届く食品のみで命を繋がなければなりません。
しかし、非常時に手に入る食品はおにぎりやパンといった炭水化物が多く、そればかりに偏ると他の栄養が不足し、健康被害を引き起こすおそれが高まります。
入所者の健康状態はそれぞれで異なり、炭水化物メインの食事が続いても問題のない方と、バランス良く栄養を摂取しなければならない方とに分けられます。
災害時こそ栄養に配慮した食事が重要になるため、備蓄食品や非常食の準備が必要になります。
【関連記事】高齢者に多い「低栄養」とは?症状やケア方法を紹介
備蓄食品と非常食を選ぶ際のポイント
ここからは、備蓄食品・非常食を選ぶ際に意識しておきたい3つのポイントをみていきましょう。
ポイント①咀嚼や嚥下の機能に対応する食品
備蓄食品や非常食を選ぶ際には、咀嚼や嚥下の機能をサポートする食品をチェックします。
おかゆであれば米粒の粗さ、水分量を確認して、飲み込みやすいかどうかを確認します。
【関連記事】ソフト食とは?メリットやデメリットと作り方のポイントを解説
ポイント②疾病に応じた減塩や低カロリーの食品
一人ひとりの方の疾病、既往症の状況に応じた食品を用意しましょう。
減塩・糖質オフ・低カロリー・タンパク質が豊富なものや、栄養の配合を考えたもの(マルチビタミン・マルチミネラルなど)があると、栄養の偏りを少なく抑えられます。
ポイント③味がよい食品
栄養バランスへの配慮や減塩といった配慮が行き届いた食品は健康維持に効果的ですが、味にも配慮されていなければ美味しく食べられず、食欲減退を招いてしまいます。
主食・副菜・デザートとメニューの種類に関わらず、味わいに配慮されたものを優先したいところです。
備蓄食品と非常食を保存する際のポイント
簡易トイレや懐中電灯のように、賞味期限のない防災用品は常温のままで保管できますが、食品にはどんなものでも賞味期限が設けられているため、保存状態に注意が必要です。
非常食・備蓄食品の保存については、以下の3点をチェックしてください。
ポイント①適切な備蓄量
備蓄は入所者ごとに健康状態や好みを踏まえた種類と量を3日分揃えておきたいところですが、在庫を抱えすぎて食材を無駄にするリスクもあります。
備蓄量が多すぎても、賞味期限のチェックや管理が行き届きにくくなるため、たくさん買い込むのは避けたいところです。
最低限必要な量を備えとして確保しておき、余分なものは溜め込まないように工夫することが大切です。
備蓄に加えて意識したいものが「ローリングストック」です。
ローリングストックを行って量を適度に減らし、消費をしながら新しくストックを足していくといった方法であれば、備蓄を溜め込む心配がなく効率的です。
【関連記事】高齢者の食事量の目安は?介護食やお粥の量の具体例を解説
ポイント②豊富な種類
非常食や備蓄食品は、栄養素・食材が偏らないようにバラエティ豊富に揃えておくと良いでしょう。
一例として、主食・主菜・副菜・汁物(スープ)・デザートの5つに分けて、肉・魚・野菜・果物をそれぞれ使用したメニューを用意します。
楽しんで食事ができるように、スイーツ類やジュース(水に溶かす粉末でもOK)もあると食卓が華やかに演出できます。
種類が豊富なほど主食とそれ以外の食品との組み合わせが豊富になるため、栄養バランスを考えた献立調整ができるようになります。
入所者の方にとっては咀嚼や嚥下がしににくいメニューはもちろんですが、同じような内容の食事が続いてしまうと精神的に食べにくさを感じてしまうものです。
たとえば、災害時、1日のほとんどがおかゆになったときに、災害が起きているという状況も相まって大きく食欲が減退するおそれがあります。
非常時でも健康維持のためには3食を口にする必要がありますから、バラエティ豊かな食事メニューを用意する必要があるのです。
ポイント③備蓄方法の工夫
大切な食品や飲料を無駄にしないためには、備蓄の方法にも工夫が必要です。
基本的に備蓄品は災害時にすぐ取り出せる(使用できる)場所での保存が推奨されています。
屋外の倉庫などが凍結または高温多湿になるおそれがある場合には、屋内の空き部屋や空きスペースを活用しましょう。
介護施設の災害時備蓄品は味や栄養価を考えバランス良く揃える
今回は、老人ホームでの災害時に備蓄しておきたい飲料水や食品について紹介しました。
基本的には3日分の備蓄が推奨されていますが、ホームの場所によっては災害発生時にライフラインや道路が寸断され、物資が届きにくく孤立するところもあります。
そのような環境では1週間分の備蓄があると良いでしょう。
食品の内容は栄養が偏らないように、主食以外にも副菜や汁物を豊富に揃えましょう。
入所者ごとの健康状態や既往症にも配慮したラインナップを意識したいところです。
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