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特養の食事とは?4つの食事形態と食事内容とかかる費用を解説

高齢者向け施設の方に向けて、特養の食事について解説する記事です。

特養での利用者の方への食事は、「飲み込んでいるのかわからない」「時間がかかる…」など、さまざまな問題があるのではないでしょうか?
また「どのような食事を提供すればよいかわからない」との悩みもあるかもしれません。

そこで今回の記事では、特養での食事について、食事形態や食事内容、調理体制などについてご紹介していきます。
今の食事に問題があると考えられているなら、もっと効率的に食事を提供する方法がおわかりいただけるはずです。

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特養とは?

まず「特養」とは、「特別養護老人ホーム」のことです。
特養は公的に運営されている介護保険施設で、他の高齢者向け施設より利用料金が安いことが特徴となります。

高齢者の方の「終の棲家」として提供されており、24時間体制の介護サービスを受けながら生活できる場です。
基本的には65歳以上の高齢者の方を対象としていますが、特定疾病があれば40歳以上の要介護3以上の方も入所できます。
ただし「要介護3」以上の介護認定を受けた方しか入居できません。

また医療ケアが必要となった場合は、退去して入院へと移行しなければならないこともあります。
もし、認知症の症状が進んで、施設にいるのが難しくなった場合も退去となることがあるでしょう。
たとえば、施設のスタッフの方に暴力をふるったり、他の入所者の方に迷惑がかかったりする場合です。

以上のように「特養」とは特別養護老人ホームのことで、24時間の介護を受けられる65歳以上の方向けの施設のことを指します。

64歳以下でも特養に入所できる特定疾病とは

40~64歳の方でも特養に入所できるようになる特定疾病とは、次の16種類のことです。

【特定疾病】

  1. がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)※
  2. 関節リウマチ※
  3. 筋萎縮性側索硬化症
  4. 後縦靱帯骨化症
  5. 骨折を伴う骨粗鬆症
  6. 初老期における認知症
  7. 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病※

【パーキンソン病関連疾患】

  1. 脊髄小脳変性症
  2. 脊柱管狭窄症
  3. 早老症
  4. 多系統萎縮症※
  5. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  6. 脳血管疾患
  7. 閉塞性動脈硬化症
  8. 慢性閉塞性肺疾患
  9. 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

引用元:厚生労働省:特定疾病の選定基準の考え方

※パーキンソン病とはイギリスの医師であるジェームス・パーキンソンが1817年に最初に症例を報告した神経難病です。日本国内では指定難病として扱われています。具体的には、黒質のドパミン神経細胞が脱落してドパミンを供給できなくなる病気です。
引用元:パーキンソン病とは?押さえておくべき4大症状と基本的な治療法

 

特定疾病は高齢の方に起こりやすい疾患ですが、40~65歳の方でも発症することがあります。
上記の16の特定疾病に罹患されている場合、65歳未満でも特養への入所が可能です。

 

特養での食事形態

それでは特養ではどのような食事が提供されているのでしょうか?

特養での食事形態は、入所者の方の身体状況によってきめ細やかに変わるものです。
そこで代表的な4つの形態についてご紹介します。

食事形態①きざみ食

咀嚼力が低下しているものの、比較的噛める方には「きざみ食」が提供されます。
きざみ食とは、食べ物を5mm~1cm程度にきざみ小さくした、ペースト状のものです。

ただし誤嚥障害のある方には、刻み食はリスクが大きくなります[1]。
ペースト状とは言え、ミキサー食やソフト食よりは噛みごたえのある食材を使っています。
そのため細かく刻んだとしても口の中に残りやすく、まとまりにくいことが特徴です[1]。

また歯の隙間に入って残りやすいことから、虫歯や歯周病の原因になることもあります[1]。
そのため、きざみ食は飲み込みが良く、比較的咀嚼力が高い方に適している食事形態です。

【関連記事】きざみ食とは?メリットやデメリットと作り方のポイントを解説

食事形態②ソフト食

特養の食事で提供される「ソフト食」とは、食材を柔らかくして舌でもつぶせるようにしたものです。
赤ちゃんの中期離乳食と同じようなものだと考えていただければ良いでしょう。

食材を長時間にわたり煮込んだり、ゆでたりして作ります。
咀嚼力や嚥下力に問題のある高齢者の方でも、噛みやすく飲み込みやすい食事です[2]。

さらに料理の見た目が保たれているため、高齢者の方でも食べやすく、食の楽しみも味わいやすい食事と言えます。

【関連記事】ソフト食とは?メリットやデメリットと作り方のポイントを解説

食事形態③ミキサー食・嚥下食

「ミキサー食・嚥下食」は、食事をミキサーにかけて、液体状にした食事のことです。
ポタージュスープのような食事をイメージしてください。
咀嚼をする必要はなく、嚥下能力が低下している方にとっても食べやすい食事です[1]。

ただし、ミキサーで細かくするだけでは飲み込みづらく、誤嚥の原因になりかねません。
そのため、多くの場合でミキサーにかけた食材に、さらにとろみをつけて提供されています。

また、細かく砕かれているため食事としての見た目の楽しさはありません。
しかしその分、彩りに気をつけたり、違う味の献立が組み合わされているなどの工夫がされていることも多いものです。

以上のようにミキサー食・嚥下食はとろみもついていて、液状で食べやすい食事のことを指します。

【関連記事】ミキサー食とは?ミキサー食を作る際のポイントや注意点を解説

【関連記事】嚥下食とは?嚥下障害や定められている基準も解説

食事形態④流動食

「流動食」とは液状の食事のことです。

ミキサー食・嚥下食との違いは、食材を細かくしているか、汁自体であるかの違いとなります。
ミキサー食や嚥下食は、あくまでも食材を液体状にしたものです。

しかし流動食はスープや果汁、乳製品など、はじめから液体状のものを使った食事のことを指します。
流動食は手術後などの弱っている方に出されることもあるほど、身体に負担をかけません。

普通流動食・特殊流動食・濃厚流動食と3つの種類がありますが、高齢者の方の身体状況によって判断されます。

【種類】

  • 普通流動食:水分を多く含む重湯などがメインで、消化が良い
  • 特殊流動食:疾病による食事制限が必要な方に向けて出される
  • 濃厚流動食:少量で豊富なエネルギーが摂れる流動食で、栄養バランスに優れる

普通流動食は、身体的に弱っている際に一時的に食べられるものです。
対して特殊流動食や濃厚流動食は食べる方の身体状況に合わせて提供されるものとなります。

流動食は液状の食事でありながら、個人にあった栄養素を効率的に摂取できる食事です。

 

特養での食事内容

特養での食事内容は、基本的に「ユニバーサルデザインフード」の区分に基づいて考えられています
ユニバーサルデザインフードとは、日本介護食品協議会による介護食の区分のことです[3]。

食べやすさを重視しながら、高齢者の方の咀嚼力に応じた食事を選べるようになっています[3]。
日本介護食品協議会では、ユニバーサルデザインフードを次の4つに区分しています[3]。

区分①比較的普通に食事できる人

咀嚼力があって、比較的普通に食事できる方向けの区分です。
目安は「かたいもの・大きいものは少し食べづらい」程度で、通常通り飲み込めるだけの嚥下力がある程度となります。

とろみがついていることもありますが、「フレンチドレッシング」程度のとろみで、それほど強くありません。
一例としてご飯であれば、「通常のご飯から軟飯」くらいの硬さです。

高齢者の方で咀嚼力・嚥下力ともにそれほど問題がない方は、区分1を選んでください。

区分②かたい物や大きい物は食べづらい人

かたいものや大きな物が顕著に食べづらい方の特養の食事は、区分1よりもひとつ食べやすくしたレベルとなります。
区分1の方に比べて少し嚥下力が低く、食材によっては飲み込みにくいと感じる程度です。

ご飯を一例とすると、「軟飯もしくは全粥」が提供されます。
とろみの付け方はとんかつソースくらいで、区分1よりもやや濃厚なとろみがつけられるレベルです。

区分2ではおかずも食材が小さく切られ、柔らかくカットされているなどの配慮がみられます。

区分③細かくてやわらかければ食べられる人

続いては、細かくてやわらかい食材が食べられる方向けの区分3です。

水やお茶など喉通りの良すぎるものが、飲み込みにくいと感じる方に適した区分となります。
区分2に比べると食材の形が保たれなくなり、とろみも「ケチャップ状」です。

ご飯で例えると、「全粥」がメインの主食となるでしょう。
卵料理ならスクランブルエッグが中心となるなど、形の残りにくい調理法で食事が作られます。

細かいもの、やわらかいものが食べられる方であれば、区分3の食事が6食べやすいはずです。

区分④固形物は小さくても食べづらく水が飲みづらい人

最後にご紹介する区分4は、小さな固形物でも食べづらい・飲み込みづらい方です。

区分4の方であれば、水やお茶などの固形物が混じっていない水分でも飲み込めないことがあるかもしれません。
区分4の方の特養の食事は、主食ではペースト粥となります。
卵料理であれば、やわらかく調理した茶碗蒸しくらいが目安です。

とろみづけもかなり強くなり、マヨネーズ状のとろみがつけられることも珍しくありません。
固形物の飲み込みが難しい方であっても、特養では専用の食事が用意されているため不安はないでしょう。

 

特養の調理体制

特養の調理体制は、施設により変わります。

一例として次のようなケースが見られます。

  • 施設の中に厨房があり、施設が調理しているケース
  • 施設の中に厨房があり、外部委託で調理しているケース
  • 施設の中に厨房がなく、外部委託しているケース

特養の中に厨房があったとしても、施設が食事を調理しているとは限りません。
施設内の厨房が使って、外部の業者が調理を担当していることもあります。

ただ施設内に厨房がないなら、外部の業者に委託して食事を提供してもらっているはずです。
特養の調理体制には、上記のような3つのパターンがあります。

献立は誰が作るのか

特養の食事は高齢者向けのものなので、献立は基本的に栄養士や管理栄養士によって作られます。
特養では栄養ケアのための栄養士・栄養管理士が配置されていることが一般的です。
高齢者の方に不足しがちな栄養素や、咀嚼力・嚥下力を考慮した食事を考えてくれています。

以上のように特養では、栄養士・管理栄養士が個人個人の状態を見ながら、適切な食事を提供しているのが基本です。

 

特養の食費の目安

特養では入所者の方に向けて食事が提供されますが、一般的な食費はどのくらいなのでしょうか?

介護保険等級についての解説も含めながら、特養における食費の目安について解説します。

特養の1日のあたりの食費について

特養では1日3食の食事が提供されますが、食費の目安は1日あたり1,445円です[4]。
つまり、31日まである1ヶ月の間利用したとすれば、44,795円となります。

介護保険の負担率や介護保険の等級によって変わる可能性もあるでしょう。
しかし、特養での基準費用額は1,445円となっています。

介護保険制度による等級について

介護保険制度は、次のような7つの等級に分けられています。

7つの等級に該当しないと認められた場合は、「介護保険非該当」の方です。

  • 要支援1:日常生活動作はできるが身体的・社会的な介護や見守りが必要である状態[5]
  • 要支援2:家事やコミュニケーションなどの日常生活における動作能力が低下しているが改善が見込まれ、部分的介護が必要な状態[5]
  • 要介護1:家事やコミュニケーションなどの日常生活における動作能力が低下しており、部分的介護が必要な状態[6]
  • 要介護2:日常的な動作能力で部分的な介護が必要な状態[6]
  • 要介護3:日常的な動作能力が低下しており、ほとんど全面的に介護が必要な状態[6]
  • 要介護4:動作能力が低下しており、介護がなくては日常生活が難しい状態[6]
  • 要介護5:動作能力が低下しており、介護がなくては日常生活が不可能な状態[6]

介護保険の等級は医師の意見書や、市区町村の担当係員による認定調査によって行われます。
総合的な判断により審査に通過すれば、要介護度の判定が行われ、対象の方の介護保険の等級が決まる仕組みです。

介護保険の等級により自己負担率などが変わるため、負担するべき食費の金額も変わるかもしれません。

 

特養の献立例

特養でどのような食事を出すべきなのか…と悩まれている方に向けて、一例として献立例をご紹介します。

献立①和食を中心とした日常の献立

まずは和食が好きな方に提供する、日常的な献立の一例です。

【献立例】

  • 朝食:お粥・焼き魚・味噌汁・野菜炒め
  • 昼食:お粥・豚の角煮・ナムル・中華風スープ・リンゴ
  • 夕食:お粥・野菜の煮物・魚の煮付け・冷奴・春雨と野菜の和物

和食中心の献立で、ごはんや麺類の嚥下が難しい方への献立例です。

朝食と夕食は魚を中心とした食事で、お昼は豚肉を使った中華風の献立となっています。
野菜炒め・ナムル・煮物・和物と野菜をたっぷりと使用しており、高齢者の方が不足しがちなビタミンも効率的に補えるでしょう。

和食が好きな入所者の方への献立一例として参考にしてください。

【関連記事】高齢者の栄養バランスの良い食事提供するために押さえたいポイント

献立②洋食を中心とした日常の献立

続いては洋食をメインとした日常の献立についてご紹介します。

もちろんひとつ前の項目でご紹介した、和食の献立と混ぜて提供しても良いでしょう。

【献立例】

  • 朝食:食パン・ポトフ・ブロッコリーのサラダ・飲むヨーグルト
  • 昼食:豚肉入りのカレーライス・サラダ・スープ・果物入りのゼリー
  • 夕食:軟飯・キャベツ炒め・冷奴・味噌汁・鶏肉の煮物

朝食と昼食は洋食メニューで、夕食は和食なので1日の中で食べるものに変化が感じられます。

入居者の方も、飽きがこない献立でしょう。
飲むヨーグルトや果物入りのゼリーなどが含まれていて、和食では補えない栄養素も接種できます。

特養での食事の一例として参考にしてください。

献立③4月の花見弁当

4月のお花見の時期に出される、特養の「花見弁当」の食事例です。

施設にいると外出の機会も少なくなりがちですが、花見弁当を食べれば外で花見をしているような気分になれるかもしれません。

【献立例】

  • たけのこごはんと桜でんぶのちらし寿司
  • 鶏のからあげ
  • シュウマイ
  • フキの煮付け
  • アスパラガスの和物
  • 桜の花の羊羹

一食分の献立です。

桜の花やフキ、たけのこなど、旬の食材がふんだんに使われています。
桜でんぶも春の明るさを感じさせてくれる食材のひとつです。

イベント食は特養に入所されている方にとっても楽しみのひとつでしょう。
栄養や食べやすさにこだわることはもちろん、しっかりと季節を感じさせてあげられる献立にしたいものです。

【関連記事】老人ホームの行事食とは?内容や特徴を紹介

 

特養の食事は入所者ごとの状況によって決まる

いかがでしたでしょうか?
この記事を読んでいただくことで、特養の食事内容や形態がご理解いただけたと思います。

特養における食事の内容や形態は、入所者の方の状態によって変わります。
咀嚼力・嚥下力ともにある方と、どちらの能力も低下している方であれば食事の内容は同じではありません。

また、施設内で調理しているか、外部委託しているかの違いもあるでしょう。

高齢者施設向け食材ならセンターミールにお任せください。常食・きざみ食・ミキサー食の3種類の介護食に対応しており、季節の行事食もご提供しています。
特養でもご活用いただけるサービスですので、特養での食事にお困りでしたらぜひ一度ご相談ください。

 

施設向け食材を検討している方へ

センターミール株式会社では、高齢者向け施設における食事の提供を、ただの「食事の時間」から「楽しみの時間」へと変えることを目指しています。私たちの食材は、おいしさを最優先に考えながらも、施設の予算に配慮した価格設定で提供しています。また、各施設のニーズに合わせて、メニューのカスタマイズも柔軟に対応可能です。

初めて業者をご利用される方も業者の入れ替えを検討している方もぜひ一度ご相談をしてください。

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