高齢者施設で起こる食中毒の種類を徹底解説
高齢者施設では、多数の施設利用者に食事を提供していることから、食中毒対策をきちんと行うことが重要です。
特に高齢者の食中毒感染後は、症状が悪化するリスクが高まるため、食事や支援業務においては、食中毒の予防対策を行うようにしましょう。
本記事では、高齢者施設での食中毒対策として知っておきたい食中毒の種類と予防方法について解説します。
目次
高齢者に起こりやすい食中毒
食中毒が起こりやすい季節は、一年の中で6月〜8月といわれています。
湿気の多い梅雨の時期に細菌が繁殖しやすくなることや、室温が20℃になると細菌が活発に増殖することから、夏場の暑い時期には特に食べ物が腐りやすくなります。そのまま知らずに食べてしまうと、食中毒を起こすことがあります。
しかし、暑い時期以外でも食中毒には注意が必要です。
例えば、ノロウイルスに汚染された肉類や魚介類にあたると、吐き気、おう吐、下痢、発熱、腹痛などの症状が起きます。
厚生労働省の「原因施設別食中毒発生状況/2021」のデータによると、家庭内での発生に次いで、高齢者施設等を含む事業場での発生率が高くなっています。
免疫力が低下している高齢者が食中毒になると、重症化するリスクが高まります。
そのため、適切な食中毒対策が重要です。
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高齢者施設で起こる食中毒事故
食中毒が原因となる細菌、ウイルスについて解説します。
発生しやすい時期や食事面で気を付けたいポイントを確認しましょう。
腸管出血性大腸菌O157
腸管出血性大腸菌O157は、腸管内で毒性の強い「ベロ毒素」を作る大腸菌の一種です。
高齢者が感染すると、腎機能や神経学的障害などの後遺症をともなう溶血性尿毒症症候群(HUS)のリスクが高まります。
6月〜9月ごろまでが発生しやすい時期で、汚染された食肉や加工品、飲料水から感染します。
※高齢者施設でのO157感染の事例
2023年11月、静岡県西伊豆町の特別養護老人ホームで、腸管出血性大腸菌O157による集団食中毒が起こりました。
利用者と職員あわせて33人に症状が出たことが確認され、施設利用者の男女2人が死亡しました。
原因は、昼食に提供された給食だと推定されています。
ウェルシュ菌
ウェルシュ菌は、人や動物の腸管、土壌、水中などに広く分布する「ボツリヌス菌」と同じ嫌気性菌です。
保存管理の悪い肉類や、魚介類、野菜を使った煮込み料理などから感染します。
熱に強い芽胞を生成し、高温でも死滅しないため、加熱調理しても、他の細菌が死滅してもウエルシュ菌はそのまま増殖します。
食べきれないカレーやシチューなどは、室温で放置しておくとウエルシュ菌が発生しやすくなります。
※高齢者施設でのウエルシュ菌感染の事例
2017年4月、大阪府堺市内高齢者福祉施設で、施設入所者95名からウェルシュ菌による集団食中毒が発生しました。
ウェルシュ菌が検出された食品は「鶏と根菜の煮物」です。
加熱調理終了から盛り付け、喫食までの温度管理、患者が全て高齢者で免疫抵抗力の低くなっていることなどから、感染が広がったと推定されています。
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ノロウイルス
ノロウイルスは、急性胃腸炎を引き起こすウイルス性の感染症です。
秋から冬にかけて発生しやすく、繰り返し感染することもあり、強い感染力を持っています。
感染すると、腹痛、下痢、吐き気、嘔吐などの症状が出ます。
汚染された食品、特にカキを含む二枚貝には注意が必要です。
※高齢者施設でのノロウイルス感染に事例
2003年4月、静岡県浜松市内の特別養護老人ホームで、ノロウイルスの集団感染が発生しました。
入所者1名が下痢・嘔吐をし、その後入所者50名、介護者11名が同様の症状を起こしました。
患者が嘔吐の際、介護者2名は素手で吐物の処理をしていたこと等、施設内の介護者と利用者など人を介して感染が拡大したと推察されています。
カンピロバクター
鶏・豚・牛の腸内にいる細菌です。ペットの糞の中にも含まれているため、犬や猫を飼っている方は要注意です。
また、加熱が不十分な肉類、特に鶏肉の感染率が高くなります。
食中毒になると神経系の病気であるギラン・バレー症候群を発症するリスクが高まります。
※高齢者施設でのカンピロバクター感染の事例
2023年7月、高知県高知市の養護老人ホームで、施設利用者70代から80代の男女7名が下痢や発熱の症状を訴え、食中毒の原因となるカンピロバクターが検出されました。
原因は施設で提供された夕食ささみの照り焼きの加熱不足だと断定しています。
サルモネラ菌
サルモネラ菌は、家畜の腸内や、河川・下水などに生息している細菌です。
牛や豚、鶏肉や卵が原因となることが多いです。
また、犬や猫などペットやねずみからの感染も要注意です。
また、生卵からサルモネラ菌が発生する場合もあるため、卵の賞味期限はしっかりと確認しましょう。
※高齢者施設でサルモネラ菌感染の事例
2020年6月、群馬県安中市内の特別養護老人ホームで、施設利用者中14名が下痢、発熱等の症状を訴え、サルモネラ菌による食中毒が起こりました。
施設内で提供された食事が原因となる食中毒事件と断定されています。
高齢者施設で起こり得る食中毒の対策方法
施設利用者や働く介護スタッフの安全を守るために、食中毒予防について十分に対策を行うようにしましょう。
手洗い
外出から帰ったとき、調理前と調理後、生鮮食品を扱うとき、生ごみ処理の後、おむつ交換、トイレの後、動物を触った後などは、手洗いをしっかり行いましょう。
食中毒の原因となる細菌やウイルスは、手に付着して、そこから人を介して感染が広がるケースもあります。
食中毒予防のためにも、習慣づけるようにしましょう。
殺菌・消毒
キッチンの中や、日頃使っている食器や調理道具は、常に清潔に殺菌や消毒をしましょう。
まな板や包丁は、肉や魚を切った後に熱湯消毒をすることで、細菌の繁殖を防ぐことが可能です。
また、冷蔵庫の中や食器収納棚などは、定期的にアルコール消毒をしましょう。
十分な加熱
加熱して調理する食材は、中心部までしっかりと火を通すようにしましょう。
家畜の腸管内にいる細菌や、魚に含まれる成分・寄生虫などは、熱に弱いという特徴があります。
したがって、十分に加熱することで、食中毒を防ぐことができます。
また、調理を中断して室温の中で放置していると、細菌が食品に付いたり、増殖したりします。
調理を中断する場合は、冷蔵庫に入れてください。
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高齢者を食中毒から守りましょう
高齢者の介護では、食中毒の予防のために、日常の衛生面や使う食材の管理、調理の環境などについて安全性を確認しましょう。
高齢者は体力や免疫力が低下しているため、食中毒による二次被害のリスクが高くなります。
高齢者のサポートには、食中毒によるリスクを抑えるために、適切な対応ができるようにしていきましょう。
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