介護施設を運営する利点・欠点とは？成功させるポイントも紹介
「介護施設を運営するメリット・デメリットは？」
「介護施設を運営するうえで必要な基準とは？」
「介護施設の運営を成功させるポイントが知りたい」
超高齢社会のいま、介護施設の需要がどんどん高まっています。
本記事では、介護施設運営に関する冒頭の疑問について詳しく解説していきます。
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目次
介護施設とは？
介護施設の運営とは、高齢者や要介護者に対し、日常生活を支えるさまざまなサービスを提供する施設の管理と運営を指します。
運営には法人設立、適切な場所と物件の選定、指定申請の達成など多面的な準備が必要です。
介護施設には居宅介護支援（ケアマネジメント）、通所介護（デイサービス）、訪問介護、認知症対応型共同生活介護（グループホーム）などのサービス形態があります。
これらのサービスを提供するためには、介護福祉士やケアマネージャーなどの資格保持者を含む専門スタッフの確保が必要です。
運営の成功には、資金調達、人材確保、高品質なサービスの提供、そして地域社会との連携が鍵となります。
介護施設の種類
一口に介護施設といっても、その種類はさまざまです。
ここからは、以下4つに分けて解説していきます。
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型老人ホーム
- グループホーム
- サービス付き高齢住宅
それぞれご覧ください。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは、高齢者一人ひとりのニーズに合わせたきめ細かいケアを提供する施設です。
自宅のような安心感と医療・介護サービスの手厚いサポートが魅力。
たとえば、専門スタッフによる24時間体制のサポート、日々の健康管理、趣味活動の充実など、利用者の質の高い生活をサポートします。
さらに、介護が必要になった際も施設内で対応可能なため、安心して長期間過ごせます。
介護付き有料老人ホームは、安全性と自立を支援する環境を提供し、高齢者の皆様が尊厳を持って快適な生活を送れるよう努めているからです。
住宅型老人ホーム
住宅型老人ホームは、自宅のような環境で自立した日常生活を送りたい高齢者に最適な選択肢です。
これらのホームは、日常の生活支援や緊急時の対応を提供しつつ、入居者が自由に過ごせるよう設計されています。
とくに、レクリエーション活動が充実しており、社会的交流や趣味活動を楽しむ機会も豊富にあります。
入居条件や月額利用料など、具体的な詳細は施設によって異なるため、事前の見学や資料請求が推奨されます。
住宅型老人ホームは、自立を重視しながらも必要なサポートを受けたい方に理想的な選択肢といえるでしょう。
グループホーム
グループホームは、認知症高齢者が少人数で共同生活を送るための介護施設です。
小規模運営が可能で、初期費用を抑えられる点が魅力。
建築費などのコストを抑え、地域社会への密接な貢献が期待できます。
地方や交通の便が悪い土地でも、自然に囲まれた静かな場所として、利用者にとって魅力的な環境を提供できるため、多様な立地条件での設置が可能です。
グループホームは、高齢化社会において需要が増加している中、安定した収益源となり得る事業モデルといえます。
サービス付き高齢住宅
サービス付き高齢住宅は、自立した日常生活を営む高齢者に、安心と快適さを提供する住宅形態です。
これらの住宅では、24時間体制の安全確保や日々の生活支援、健康管理のサポートが提供され、入居者一人ひとりのプライバシーを尊重しつつ、必要な時に適切な手助けが受けられます。
具体的には、日常の家事や食事提供、緊急時の対応など、自宅での生活が難しい部分をサポートし、高齢者が自分らしく、安心して生活を続けられる環境を提供しています。
このようなサービス付き高齢住宅は、自立した生活を送りたいが、一定の支援が必要な高齢者に最適な選択肢となっています。
【関連記事】サ高住（サービス付き高齢者向け住宅）の食事内容とは？
介護施設を運営するメリット
ここからは、介護施設を運営するメリットを見ていきましょう。
メリット①長期的に安定した利益が見込める
介護施設の運営は、日本の急速な高齢化を背景に、長期的に安定した利益を見込むことができる魅力的な事業モデルです。
とくに、適切な立地を選定することで、継続的な需要が保証され、介護施設は賃貸住宅など他の土地活用方法と比較しても、収益の安定性が高いと評価されています。
2040年までに65歳以上の人口がピークに達すると予測されており、そのため、市場規模は拡大し続けることが予想されます。
介護施設を運営することで、社会的なニーズに応えながら、長期的な安定収益を実現できるでしょう。
この点から、介護施設の運営は土地活用の有効な選択肢となり得ます。
メリット②節税が期待できる
介護施設を運営する最大のメリットのひとつは、節税効果が期待できる点です。
介護事業者は、特定の条件下でさまざまな税制優遇措置を受けられます。
たとえば、新規に施設を建設する場合や既存施設を改修する際にかかる費用に対して、減税措置が適用されることがあるからです。
また、介護サービス提供に必要な設備投資に対しても、税務上の優遇が受けられるケースが多々あります。
このような節税措置は、介護施設の経営負担を軽減し、長期的な運営の安定に貢献します。
しかし、これらの節税メリットを最大限に活用するためには、適切な知識と計画が必要です。
介護施設運営における税務計画は複雑であり、事業の具体的な条件や政府の政策によって変動する可能性があるため、税務アドバイザーとの綿密な相談をお勧めします。
介護施設を運営するデメリット
次は、逆に介護施設を運営するうえでのデメリットを解説していきます。
デメリット①転用しにくい
介護施設の運営は、地域社会への貢献という大きなメリットを持ちながらも、その転用の難しさは大きなデメリットとなります。
とくに、施設の設計と建設には膨大な投資が必要で、一度介護施設として建てられると、他の用途に変更することが困難です。
これは、介護施設特有の設備や規制に準拠した建築が必要となるため、再利用の際には大規模な改修が必要になるからです。
経営を考える際には、長期的な視野での計画が求められ「適正に運営する」という条件のもとで、利益を上げることが可能とされています。
デメリット②事業者探しが難しい
介護施設を運営する際、事業者探しの難しさは大きなハードルです。
市場の需要は高まる一方で、信頼できる事業者を見つけるには、厳密な基準と深い業界理解が必要です。
成功事例や失敗談を比較検討し、事業者の選定には実績や評判を重視することが重要。
また、介護報酬の国の方針による改定に柔軟に対応できる事業者を選ぶことが、施設運営の安定性を保つ鍵となります。
このような情報武装が、質の高い介護サービス提供への第一歩です。
介護施設の現状
ここからは、介護施設の現状を2つの側面から見ていきましょう。
現状①要介護者が増加している
日本の高齢化は世界に例を見ない速度で進行しており、要介護者の増加は社会的な課題となっています。
内閣府の令和5年版高齢社会白書によると、高齢化率は29.0%に達し、今後も高齢者数の増加が予想されているからです。
とくに、65歳以上の一人暮らしや高齢者のいる世帯が全世帯の約半数を占めるなど、高齢社会の影響は家庭にも及んでいます。
このような背景から、介護施設へのニーズは高まり続け、社会全体で要介護者支援の充実が求められています。
現状②働き手が足りない
介護施設運営における深刻な課題、働き手不足。
令和4年度「介護労働実態調査」によれば、介護事業所全体で感じられる人材不足感は60%台に達しているからです。
この人手不足は、質の高いケア提供への直接的な障害となり、業界全体のサービスレベルに影響を及ぼしています。
解決策として、国や地域が「参入促進」「資質の向上」「労働環境・処遇の改善」に総合的に取り組むことが重要であると、厚生労働省は指摘。
これらの取り組みは、介護職員の賃金アップや待遇改善を含む幅広い施策を通じて、より多くの人材をこの重要な業界に引き付けることを目指しています。
介護施設は儲かるのか？
そもそも、介護施設は儲かるのかが気になる方も多いでしょう。
結論をいえば、儲かるチャンスは多いものの、未経験では運営が難しいというのが現実です。
そこで、運営における課題点や成功させるポイントなども詳しく後述していきます。
ここからはひとまず、具体的にどれほど儲かるのか、以下2つの観点から見ていきましょう。
- 主な収入源
- 考えられる支出額
それぞれ解説していきます。
主な収入源
介護施設の主な収入源は、介護保険からの「介護報酬」、サービス付き高齢者向け住宅（サ高住）の家賃、有料老人ホームの利用料や管理費です。
とくに、介護報酬は国の方針により定期的に改定され、施設が提供する介護サービスの質と量に基づいて決定されます。
これにより、高品質のサービスを提供する施設は適正な報酬を受け取ることが可能となります。
一方、サ高住や有料老人ホームでは、市場の需要に応じて家賃や利用料を設定し、収入を確保します。
これらの収入源を効果的に管理することが、介護施設運営の成功につながるでしょう。
考えられる支出額
介護施設の運営における支出は、人件費、施設維持管理費、食事その他サービス関係費、広告費、事務費用、建設借入利息、固定資産税等、減価償却（建物設備関係償却）、開業費関係償却など多岐にわたります。
とくに人件費は売上に対する大半を占め、利益確保のため適正な人員での運営が重要です。
また、収益モデルとしては、家賃や管理費、介護サービス費、食費その他サービスからなり、入居一時金も大きな収入源となり得ます。
しかし、介護報酬の改定や人材不足、重度化する入居者のケアなど、経営を取り巻く環境は厳しく、効率的な運営と事業計画の慎重な策定が求められます。
【関連記事】特養の食事とは？4つの食事形態と食事内容とかかる費用を解説
介護施設を運営するうえでの課題点
ここからは、介護施設を運営するうえでの課題点を解説していきます。
とくに重要なのは、以下の3つです。
- 利益の確保
- 人材の確保
- 入居者の要介護レベルの悪化
それぞれ確認してください。
課題点①利益の確保
介護施設の運営における大きな課題のひとつは、確実な利益の確保です。
日本の少子高齢化が進む中、介護施設への需要は高まる一方で、競争も激化しています。
利益を確保するためには、効率的な運営と質の高いサービス提供が必須です。
具体的には、職員の教育や待遇改善を通じて、サービスの質を高めることが挙げられます。
また、介護報酬の適正な管理や、新しいサービスの開発によって収入源を増やすことも重要です。
これらの取り組みを通じて、介護施設は安定した利益を確保し、持続可能な経営を目指せるでしょう。
課題点②人材の確保
介護施設における人材の確保は、業界全体の大きな課題です。
介護労働実態調査によると、良質な人材確保の難しさは事業運営上の問題点で56.7%を占めています。
生産年齢人口の減少と共に、外部からの新たな人材を見つけることがいっそう困難になっています。
この状況に対応するためには、既存職員のスキルアップと働きやすい環境作りが不可欠です。
具体的には、教育と研修の充実、適正な報酬体系の構築、職場環境の改善がキーとなります。介護施設運営の成功には、人材の確保と育成が欠かせない要素です。
課題点③入居者の要介護レベルの悪化
介護施設での入居者の要介護レベルの悪化は、施設運営の大きな課題です。
要介護者数の増加は、主に認知症、脳血管疾患（脳卒中）、高齢による衰弱、骨折・転倒が原因とされています（内閣府、令和4年版高齢社会白書より）。
このような背景を踏まえ、施設では入居者一人ひとりの健康状態を正確に把握し、適切な介護計画を立てることが重要です。
また、介護職員の教育と研修を充実させることで、入居者の要介護レベルの悪化を防ぐ対策を講じることが求められます。
介護施設を運営するうえで必要な基準
ここからは、介護施設を運営するうえで必要な基準を4つに分けて解説していきます。
設置者
設置者の選択は、介護施設の運営において重要な要素のひとつです。
介護施設を開業する際には、社会福祉法人や医療法人、株式会社、合同会社など、さまざまな法人形態から選択可能です。
とくに、株式会社の形態での参入が近年では一般的になっています。
これらの選択肢は、施設の目指すサービスの質、運営の柔軟性、資金調達のしやすさに大きく影響します。
たとえば、株式会社形態では資本市場からの資金調達が可能で、事業の拡大やサービスの多様化に対応しやすい反面、社会福祉法人では公的補助の受けやすさや非営利の信頼性がメリットとして挙げられます。
設置者の選択によって、施設の運営方針や将来像が大きく変わるため、事業計画を練る段階での慎重な検討が求められます。
設備
介護施設の成功には適切な設備が不可欠です。
設備投資は高品質なケアサービス提供の基盤となり、利用者の安全と快適性を保証します。
たとえば、バリアフリー設計、高度なセキュリティーシステム、適応型ベッドやリハビリテーション機器などがあります。
これらは、利用者に安心と自立を促し、同時に介護職員の労働負荷を軽減するでしょう。
経営者は設備に関する客観的なデータや成功事例を参考に、施設の特性に合わせた投資計画を検討する必要があります。
これにより、介護施設の魅力を高め、地域社会での競争力を保持できます。
職員
介護施設の成功は、質の高いサービス提供に他なりません。
その鍵を握るのが、施設の職員です。
職員の育成と働きやすい環境作りは施設の品質を左右し、結果的に施設の評価と直結します。
たとえば、介護負担の軽減策として人員を増やすと人件費が上昇し、利益確保が難しくなるからです。
しかし、政府は介護人員の規制緩和を進め、より効率的な人員配置を可能にしています。
この動向を踏まえ、介護施設は職員一人ひとりの質を高めることで、サービスの向上と経営の効率化の両立を目指すべきです。
教育研修の充実や適切な人員配置は、施設運営の成功に不可欠な要素となります。
資格
介護施設の運営において、特定の資格が必須ではないものの「介護福祉経営士」のような資格は大きなメリットをもたらします。
この資格を通じて、経営者は人材管理や育成など、運営に必要な幅広い知識を習得できるからです。
とくに、介護施設の効率的な管理やサービスの質の向上を目指す方にとって、この資格は貴重な学びの機会を提供します。
コンピューターを利用した試験方式であり、場所を選ばずに受験可能なため、多忙な経営者でも取得しやすい点も魅力のひとつです。
資格取得を検討している方は、この機会を活かしてみてはいかがでしょうか。
介護施設の運営を成功させるポイント
ここからは、介護施設の運営を成功させるポイントを、5つに分けてご紹介します。
- 市場調査を慎重に行ってから物件を決める
- 介護施設を建てる前に事業者を探しておく
- 職員の待遇や勤務形態を見直す
- 職員の教育や研修を充実させる
- 効率的に運営を行う
それぞれ確認してください。
ポイント①市場調査を慎重に行ってから物件を決める
介護施設を選ぶ際、市場調査は非常に重要です。
最新の調査によると、高齢者向け住宅市場は年々新築供給で整備が進み、2030年までに高齢者人口に対する住宅の供給割合を4%にする目標が設定されています（出典：矢野経済研究所）。
このデータは、物件選びにおいて利便性や生活環境の維持を考慮する必要性を示しています。
事業者は、現在の生活圏を維持し、将来の展望を見据えた住宅環境の整備に注目することが成功への鍵です。
ポイント②介護施設を建てる前に事業者を探しておく
介護施設を成功させる鍵は、建設前に正しい事業者を見つけることにあります。
信頼性の高い事業者選びは、施設の品質、運営のスムーズさ、そして長期的な利益に直結します。
適切な事業者の選定には、その企業の実績、財務健全性、介護業界における経験が重要です。
事業者が提供するサービスの質は、施設への信頼性を高め、結果として入居者の満足度向上につながります。
早期にパートナーを見つけることで、建設計画の立案から運営開始まで、一貫した品質と効率を確保できます。
ポイント③職員の待遇や勤務形態を見直す
介護施設での職員待遇や勤務形態の見直しは、施設運営の成功に不可欠です。
長時間労働の改善や非正規雇用者の待遇向上を目指す「働き方改革」は、人手不足解消、離職率低下、採用率向上へと直結します。
実際、リコーの働き方改革ラボによると、介護業界は長時間労働や精神的疲労、慢性的な人手不足に直面しており、これらの問題に対処することで介護業界全体の生産性向上が期待できます。
この取り組みにより、職員が働きやすい環境を実現することが、より良い介護サービスの提供につながるでしょう。
ポイント④職員の教育や研修を充実させる
介護施設の運営において、職員の教育や研修を充実させることは、サービスの質の向上や職員満足度の向上に直結します。
とくに、介護業界では人材不足が深刻な問題となっており、職員がスキルアップを実感できる教育研修プログラムの提供は、職員の定着率向上にも効果的です。
たとえば、介護職員の賃金アップを目指した特定手当改善加算制度や、多様な勤務形態の導入、効率的な運営が介護施設の成功ポイントとして挙げられます。
これらは職員のモチベーションを高め、長期的なキャリア形成をサポートするために不可欠です。
したがって、教育や研修の充実は、施設のサービス品質を高めるだけでなく、職員の働きがいや職場への満足度を向上させ、結果として利用者にとってもより良いサービスの提供につながります。
ポイント⑤効率的に運営を行う
介護施設の効率的運営は、質の高いサービス提供と経営の安定の鍵です。
具体的には、人件費の適正化と介護報酬の効果的な管理が重要です。
たとえば、職員の勤務形態の多様化や教育研修の充実化により、人件費バランスの改善とスタッフのスキル向上を目指すべきです。
さらに、介護報酬の適切な理解と管理により、事業の収益性を高め、質の高い介護サービスを持続可能な形で提供することが可能となります。
これらの取り組みを通じて、介護施設は高齢化社会のニーズに応え、地域社会に貢献できるでしょう。
介護施設の運営は長期的利益と節税が利点
日本の急速な少子高齢化の進行に伴い、介護施設の需要は増加傾向にあります。
しかし、介護職員の不足や待機者の増加が課題として挙げられています。
介護施設経営においては、職員間のコミュニケーションの向上、待遇改善、勤務形態の多様化、教育・研修の充実が重要なポイントです。
効率的な運営と介護報酬の適切な管理が施設を安定させるために必須であり、これらの対策を講じることが、将来にわたって質の高い介護サービスを提供し続けるための鍵となります。
